シャネルの才能

シャネルを本当に変えたのは、当時のパリの社交界を代表したミシア・セール(本書ではミジア)でした。
ドビュッシー、ロートレアモン、プルースト、ロシアからバレエ団リュスを引き連れてきたディアギレフ、ピカソ、ストラヴィンスキー、そしてジャン・コクトー。
みんながみんなミシアの美貌と感覚に酔わされました。
そのミシアがシャネルを引き立てるのだ。
ミシアの社交がなかったなら、シャネルはココ・シャネルにならなかった。
とくにミシアが会わせたディアギレフがシャネルと深くなって、シャネルは大いに変わります。
1920年代のシャネルはロシアの色を濃くしていくことによって自分を磨いたといってよい。
シャネルはディアギレフの公演後のパーティを必ず引き受けたのだ。
そして、女たちが何を着ればよいのか、見抜いていった。
ディアギレフの舞台とパーティがココの才能を引き出したわけです。
それだけでなくレイモン・ラディゲを失ったコクトーが阿片中毒になっていったのを身を呈して救ったのはシャネルでした。
このことはのちのシャネルに何百倍にもなって戻ってくる。
が、計算はなかった。
シャネルは「自分の身柄を男に預ける才能」とともに、もともと「気になる男の身の危難を一身に引き受ける愛情と度胸」をもっていたのです。