シャネルの宿命
男というものは、その女性が何に犠牲的になるかを見ているのであって、どんな自己保身的な女性にも関心をもたないものなのです。
とくにちょっと犠牲を払ってすぐにその報酬をほしがる女からは身を引きたくなるものだ。
シャネルには、その「相手に何かをほしがる」というケチな根性がなかった。
このシャネルの魅力はかえって何かに充実している男をぐらりとさせました。
だから、イートンホールの持ち主で大金持ちのウェストミンスター公爵や、ポワレをはじめとするデザイナーのデッサンを担当していた花形イラストレーターだったポール・イリブが、美と男に関する 献身の哲学をもったシャネルに近づいたのは当然だったのです。
すでに「シャネル・スーツ」でも「シャネルNo.5」でも名をあげつつあったシャネルは、二人に対してやっと落ち着いた女心を見せはじめました。
とくにイリブとは結婚してもよいと思っていたのだが、何の因果か、イリブは急死する。
シャネルの人生を見ていると、自分が賭けた男はたいてい早死にするか、身をもちくずす。
シャネルが獅子座の宿命を背負っていると言われはじめたのはこのころからです。
こうして戦争になる。
フランスは戦火に巻きこまれ、シャネルも結局は、男との生活を一度としてすることなく、モードにすら関心を失って長い沈黙に入っていきます。